太田あさひの日誌

旧・中西香菜さんがおすすめの映画をひたすら観るブログ。アンジュルムの中西香菜さんがおすすめする映画の感想だけでなく、旅行や考えごとについて書き残す。

舞台『仮面山荘殺人事件』ネタバレ感想

先日、舞台『仮面山荘殺人事件』を観てきた。場所は、サンケイホールブリーゼ

わたしは「演劇集団キャラメルボックス」が大好きなので、成井豊さんが脚本・演出というだけでテンション爆上げである(成井さんはキャラメルボックスのほぼ全作品の脚本・演出を担当している)。さらに、畑中智行さん、坂口理恵さん、筒井俊作さん、原田樹里さん、関根翔太さんらキャラメル所属俳優も5名出演ということで、もう観るしかない。もっと観るしかないのは、主演に個人的にエモしか感じられない平野綾さん、脇に大物俳優・辰巳琢郎さんと、他にも豪華なキャスト陣。キャラメル所属ではない大物俳優が「成井さん流=キャラメル流」にどう料理されるのかとっても楽しみである。そして、元乃木坂46伊藤万理華さんも出演ということで、アイドルオタクとしても気になる。というか、最近の演劇界はアニメ、アイドル各界のオタクを総取りしてる感がすごいな。

観劇後

おもしろかった〜〜〜! ていうか、騙された〜〜〜! 演劇最高〜〜〜!

とにかく、何回も騙された。
まずは、朋美を殺した犯人。わりと序盤から朋美を殺したのは婚約者の高之かもしれないという疑いは持っていたけれど、何より高之自身が謎解きしてる感ある演出満載だったので、疑いが確信に変わることはなかった。高之が「謎解きしている様子を演じる」ことができた余裕の理由が「殺そうとしたけれど、状況証拠から朋美が死んだ原因は自分じゃなかったと確信していたこと」ってのも予想外。その状況証拠を作り上げたのも、密かに高之を愛していた雪絵の仕業かと思いきや、朋美本人だったというのも…予想外というよりも、心がえぐられる思いだった。できれば、そうであってほしくなかった。最愛の婚約者に殺されようとしていることに気づいて、なおも婚約者を庇おうとするって、どんなに残酷な気分なんだろう。高之が怪我で絶望する朋美に与えた愛情がどれだけ朋美を支えてきたのか、それを最悪の形で裏切ろうとした高之の行動がどれだけ浅はかだったのか、が暴かれるラストシーンは観ているこっちも血の気が引いた。裁判という公的なやり方でもなく、法に触れるやり方でもなく、こんなにも強烈に復讐できるとは思わなかった。さらに、この復讐は高之に「愛した人を殺そうとした自分」を突きつけることが目的なので、成功させるためには、高之は朋美のことを愛していなければならないというところも残酷だ。結果だけ見れば、朋美は高之に殺された(ようなものな)ので、高之は朋美を愛していなかったかもしれないのに。高之が少しでも朋美への愛情を残していることに賭けて復讐した家族たちの心情を想像するとゾッとする。
そして、やっぱり、一番騙されたのは、山荘に集まった全員がグルだったということ。山荘に集まった朋美の家族とその友人たち、逃げてきた銀行強盗犯と警察官は全員グルで、全ては高之に復讐するためのお芝居だった。わたしは、銀行強盗は復讐を邪魔した奴らだと思っていたので、本当に最後の最後にどんでん返しされた。巧みだったのは、途中から合流する銀行強盗の顔を見られないように全員に目隠しをしたこと。これは、警官役と合流する銀行強盗役が同じだったので高之に顔を見られないようにするためだが、演劇では端役は1人2役なんてことはよくあることなので、観客としては全く気づかなかった。「あ、警官役と銀行強盗役は同じ人なのね」くらいだ。劇中劇を上手く利用した巧みなトリックだった。お見事!


キャラメルっぽいオープニングダンスを期待していたけれど、それはなかった! そういえば『容疑者Xの献身』のときもなかったような…? と思って調べていたら公式サイトにこんな対談が。

筒井:原作全体に描かれているピリピリした空気感というか、緊張状態が続いていると思うんですけど、こういう緊迫感を舞台で表現するのは楽しみです。
成井:そうだね。雰囲気は『容疑者Xの献身』に近いかも。しかも密閉されているからね。あとは、ダンスはありません。これは踊っちゃダメでしょう。
筒井:踊る準備万端だったんですが(笑)
原田:『容疑者Xの献身』もダンスシーンはありませんでしたしね。

引用元:舞台『仮面山荘殺人事件』初舞台化決定記念座談会

なるほどなあ。確かにダンスやっちゃうとピリピリしてる感を出すのは難しいかもな。と言いつつ、筒井さんにはデブネタでめちゃくちゃ笑い取らせてたけども(笑)。


乃木坂46伊藤万理華さん、いい役もらったなあ。初々しい演技が映える素晴らしい配役だった。
期待の平野綾さんは、死んだ人間役ということもあり、主演ながら出番自体は少なめでちょっと残念。しかし、以前に見たときよりも、なんというか透明度が増していて…。演じていた純情な女性・朋美がそのまま乗り移っているかのようだった。あーや大好き。
辰巳琢郎さんも、味のある役どころで本当に良かった。初めて生の演技を拝見したけれど、本当にいい。
そして何より、キャラメル所属俳優陣の安定感。筒井さんのデブネタは最高。畑中さん、主役じゃないのにいつも通りほぼ舞台上にいてストーリー回しまくっててウケた(笑)。


そして、どうやら平野綾さんと成井豊さんはお誕生日だったらしく、カーテンコールでバースデーソングとケーキのサプライズ。成井さんは「34年劇団やってきて舞台上で祝ってもらったのは初めてだ」と言っていた(笑)。あーやが最後に「あたたかい作品」と言っていたけど、同じくらいのあたたかい座組何だろうなというのが伝わってきた。芝居ってこういうところが好き。どれだけ役柄を演じていても、役者自身の何かが漏れでてくるところ。そういえば、作中に出てくる「仮面があった方がその人らしさがわかる」という小話は良かった。仮面を被った父と似た背格好の人が集まっても、「10分あればお父さんを見つけられると思う」と言った朋美が愛おしい。仮面があるからこそ、その人らしさや内に秘めた感情が顕著に見える。わたしが芝居を好きな理由もまさにこれ。その人だからこそ、その役の良さが出ることもあったりして、本当に芝居って面白い。
アイドルを好きになるときも、普段は完璧に「アイドルを演じている」のに、一瞬垣間見える素直な感情にずどーーーーんと落ちてしまう。そういうのだめ。やめてほしい。みんな完璧にやって。某工房の小●田さんも完璧ぶりっ子アイドルしてたのに急な写真流出で「え、彼氏いたの?!」っていうので落ちてしまったので(落ち方が異常)。


おもしろかったなあ。成井さんの東野圭吾原作舞台はハズレがない。というより、成井さんの原作ものはハズレがない。またキャラメル関連の舞台があれば観に行きたい。というか、本当はキャラメルボックスの公演を観に行きたいんだけど…。(キャラメルボックスの運営会社は今年6月に破産している)