『ラファエル前派の軌跡展』感想
あべのハルカス美術館で開催中の「ラファエル前派の軌跡展」に行ってきた。
前情報なしでパッと行ったのでどうかと思っていたのだが、めちゃくちゃ当たり! とっても楽しかった。
- ラファエル前派の軌跡-あべのハルカス美術館(公式サイト)
ラファエル前派とは
まずは、ラファエル前派とはなんぞや、というところから。わたしは、美術館に行くのは大好きだけれど、基本知識が全くないのでこういう解説を読んでもピンと来ない。ピンとは来ないけれど「ほ〜ん」とはなる。「ほ〜ん」となっていないと、どう観たらいいかわからなくて結局何も頭に入らないということがあるので、一応、読むようにはしている。
1848年、ラファエル前派同盟は英国美術の刷新をめざし結成されました。画壇から攻撃された彼らを擁護したのは、偉大な風景画家ターナーを支援する美術批評家ラスキンでした。その思想はロセッティやミレイ、バーン=ジョーンズ、モリスらメンバーの精神的支柱となり、多くの追随者に引き継がれてゆきます。本展では、ヴィクトリア朝美術に輝かしい軌跡を残し画家たちの功績と、彼らを照らしたラスキンの美学をご紹介します。
ほ〜ん。この解説と展覧会会場の解説を合わせて考えると、要するに、イギリスのアカデミック美術からはみ出てしまった画家たちをラスキンという美術批評家が擁護した、それが「ラファエル前派同盟」と呼ばれている、ということらしい。
ラスキンは「緻密な自然観察」を大事にしていたようで、ほとんどが風景画だった。個人的に、ターナーの水彩画とラスキンの作品は圧巻だった。柔らかいのに明暗のしっかりした光の取り入れ方がとてもよくて、抽象画のような、写実画のような、なんともいえない味わいを出していた。
この「ラファエル前派同盟」、画家あるある「男女関係が複雑」をしっかり押さえていた。「友人から奪って結婚したが世間の風当たりが強くて病んでいる妻」とか「ラスキンの妻を奪って評価が下げられてしまった画家」とか、そんな裏事情知らされて作品観てたらなんかこっちが気まずかったわ(笑)。画家のコミュニティってなんでこうなるんだろうな。大学生のサークル活動じゃあるまいし。コミュニティが狭いのかな。
良かったところ
感銘したのは、第1章「ラスキンとターナー」でのターナー作品の美しさ。ターナーと言えば、暗い色使いのイメージがあったのだが、この展覧会に出ている作品は、ほんのりと明るい色使いの風景画ばかりだった。これが本当に良い。ターナーの水彩画を他でも観れるところがあったら観にいきたい。ターナーを崇敬したラスキンの作品もターナーの影響を多大に受けていて、美しかった。
続く第2章「ラファエル前派」の作品たちは宗教画が多いのだが、これがアカデミックに捕らわれた描き方から脱却するということなのだろうか。中世っぽい感じ。会場の解説には「中世美術のような誠実な表現」といったようなことが書いてあった気がする。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《クリスマス・キャロル》(1867)
ウィリアム・ホルマン・ハント《シャロットの乙女》(1887ー92 頃)
いちばん好きだったのは、第4章「バーン=ジョーンズ」。中世宗教画のような様相を成していて、一枚の絵画から物語が聞こえてくるようだった。実際、神話などを題材にした作品が多かったようだ。こっちの写真を撮りたかったぜ〜〜〜!(写真撮影可能エリアは第2章のみ)
最初から最後まで見どころたくさんの素晴らしい展覧会だった。
いちばん気に入った作品
ジョン・ウィリアム・インチボルト《アーサー王の島》(1862)
(写真、ポストカードなし)
アーサー王の城があったという伝説がある島を描いたもの。
明暗がはっきりしていて色使いに迫力がある。その上、描写が繊細で観ていて飽きない。「ラスキン好きそ〜」という感じの表現に迫力をプラスしたような作品だった。
とても気に入ったけれど、ポストカードの販売もないし、個人蔵ということで滅多に観られなさそうなのが残念。
エドワード・バーン=ジョーンズの《慈悲深き騎士》(1863)も良かった。一枚でたくさん妄想できて楽しかった。