太田あさひの日誌

旧・中西香菜さんがおすすめの映画をひたすら観るブログ。アンジュルムの中西香菜さんがおすすめする映画の感想だけでなく、旅行や考えごとについて書き残す。

映画『パコと魔法の絵本』ネタバレ感想

先日、モーニング娘。秋ツアー@広島に参戦した。広島までの移動時間がたっぷりあったので、中西香菜さんが紹介してくれている映画を観た。ちょっと(かなり?)古いが、2014年5月6日のブログで紹介されていた映画だ。

 

パコと魔法の絵本』(2008)

人間なので、悲しかったり悔しかったり嬉しかったり痛かったり、



ない【71】てしまったりすることもあると思いますが、



涙を流すとスッキリするしたまには我慢しない日もええんちゃうかなぁと思います!

 

 

パコと魔法の絵本というお話に、



涙が止まらないおじさんがお医者さんに



「涙はどうやったら止まるんですか?」と言うんです!



その答えに、




「簡単です。いっぱい泣けばいいんです」



というシーンがあるんですが、




この言葉が頭の中にずーっと残っています!



それを知ってから迷惑かからないように泣きたい時は、


思う存分泣きます

この頃のスマイレージは、初の武道館公演を目前にチケット販促に必死である。実際、このブログの最後には半ばこじつけのようなチケ販の文章がひっついている。当時のインタビュー記事を辿ると、初の武道館公演に向けてメラメラしているメンバーのコメントなどもあり、スマイレージにとって武道館公演はかなりの挑戦だったことがわかる。しかし、武道館公演自体は全ハロプロユニット&研修生の“ゲスト出演”し、「実質ハロコン状態」にされてしまう。 そんな武道館公演に向けてカウントダウンブログを更新する中西香菜さん、好きすぎる。残りの日数の数字に掛けて文章を作っているところもなんだか健気で応援したくなる。

与太話はさておき、中西香菜さんから「涙を流すとスッキリするしたまには我慢しない日もええんちゃうかなぁと思います!」という言葉が出てくるのは、かなりエモいと思う。「みんなに迷惑をかけている」「自分だけできない」「ごめんなさい」など、ネガティブな発言が目立ってしまう(というかそういうところが事務所的には“売り”だったのであろう、推せ度MAXな)中西香菜さんが、「たまには我慢しない日もええんちゃうかなぁ」と自己肯定している姿はかっこいい。「頑張りすぎない自分」を受け入れることは、「頑張る自分」を受け入れることよりも、勇気と優しさが必要なはずだ。一見何もしていないように感じる時間を過ごす勇気と、自分自身を客観的に見つめて認めてあげる優しさが、中西香菜さんにはある。

わたしは、彼女の悲しさや悔しさに共感し、それでも輝こうと努力する姿に勇気づけられただけで十分だったのに、さらに「たまには我慢しない日もええんちゃうかなぁ」なんて大きな優しさを向けられてしまったら、どうしたらいいの? 死ぬの? そんな大きな優しさを中西香菜さんに与えた一因が『パコと魔法の絵本』という映画なのだ(暴論)。観るしかない。ということで、観た。

 

※この先、めーーーーちゃくちゃネタバレなので、先に観たい方は今すぐAmazonプライムへ!(業者ではない)

 

まず、開始から15分ほどの間は、画面がごちゃごちゃしすぎてわかりにくい上に、それなりに人数の多い登場人物紹介パートのようなものが続く、辛抱できない視聴者をなぎ倒していく強気映画である。もちろん、わたしは「観るしかない」ので、(我慢して)観続ける。

 

やっと始まるストーリーはこうだ。舞台は変人ばかりが入院する病院。主人公の大貫は、ワガママで傲慢な態度の老人で、みんなの嫌われ者だ。誕生日にもらったという絵本を毎日読んでいる可愛らしい少女・パコに対しても意地悪で、ある日勘違いからパコの頬を叩いてしまう。しかし、翌日パコはいつも通りに大貫に話しかける。パコは、一日しか記憶が保たないという障害を負っていたのだ。初めはパコを鬱陶しがっていた大貫だが、パコと接するうちに「明日もこの子の心に居ていたい」と思うようになる。その日から、大貫は毎日パコに絵本を読み聞かせるのだ。堅物おじさんが無垢な少女と触れ合って心を改めていくという王道泣かせストーリーである。

「王道すぎてチープになるのでは?」という心配は全くない。理由は2つある。1つは、めちゃくちゃ画面がうるさいことだ。「草間彌生か絹谷幸二か?」と思うような色使いで、衣装や舞台美術をゴテゴテに仕上げている。最初はしつこくて目がチカチカするし脳内処理が大変だが、慣れると世界観がファンタジー調にバッチリ決まっていて、絵本の内容との親和性も高い。もう1つは、登場人物全員がぶっ飛んでいることだ。みんなワケありの変人なのだ。銃が暴発して怪我しただけと言い張るヤクザ、家族を捨ててオカマになったマダム(?)、消防車に轢かれた消防隊員、などなど。もうとにかく画面もキャラクターもごちゃごちゃしていて飽きないのである。

 

もう1点、注目すべきなのは、「劇中劇」というメタ構造を使い倒している点だ。「劇中劇」は上手くやらないとしつこすぎて冷めてしまうのだが、全くそんなことにならない。

まず、大貫とパコの話自体が、現在から過去を振り返るという点である意味「劇中劇」である。ただの回想シーンのようにも見えるが、最後に語り手が絵本作家であることが明かされ、一気に「劇中劇」感が増す。追い飯ならぬ追い「劇中劇」である(は?)。

そして、その「劇中劇」のなかでパコの絵本「ガマ王子とザリガニ魔人」が何度も何度も繰り返される。この絵本が「劇中劇中劇」としてかなりの存在感を発揮している。というのも、「ガマ王子とザリガニ魔人」の主人公・ガマ王子は、まるで大貫そのものなのだ。

ガマ王子は、ワガママ放題で国民に意地悪ばかりしている。意地悪というとかわいく聞こえるが、要するに暴虐なのである。しかし、ある日、悪党ザリガニ魔人に殺された国民たちを見て、「今までいっぱい酷いことした バカで間抜けな僕だけど なにかみんなにしてあげたくて」と涙を流す。ガマ王子は「ごめんよ 僕がバカだった」と繰り返しながらザリガニ魔人に一人で立ち向かうのだが、ザリガニ魔人に倒されて死んでしまう。

大貫もガマ王子と同じ道を進んでいく。大貫も周りに意地悪ばかりしていたが、パコの境遇を知って涙を流し、「なにかしてあげたい」と、来る日も来る日もパコに「出会い」、パコのために絵本を読み続ける。自分の発作が酷くなって「あしたでいいよ」と言われても「明日じゃダメなんだ」と絵本を読み続ける。いつか自分のことを覚えてくれているパコに会えることを信じて…。この後もガマ王子と同じ運命をたどるとしたら…。死亡フラグ立ちまくりである。

この絵本がまた絵本らしい詩的でリズムのある調子なのが味わい深い。絵本ほしい。

 

そして、物語が一番盛り上がるのは終盤の「劇中劇中劇」のシーン。大貫の熱意に圧されて、パコのためにみんなで「ガマ王子とザリガニ魔人」を演劇として上演するシーンだ。あらゆる伏線が、時におかしく 時に切なく回収されていく圧巻のシーンである。フルCGのアニメーションも交えながら劇は勢いよく進んでいく。何度でも観たい。

 

あとあとあとあと!(うるさい)個人的にめっちゃ良かったのは、手法がいちいち古典的なこと。「劇中劇」もそうだけれど、何度も同じ台詞を繰り返したり、繰り返しのなかで少しずつ表現が力強くなることで時の流れと意志の強さを感じさせたり、とにかく使い古された手法なのにとてもグッとくる。使い古された手法には使い古されている理由がある。こういうわかりやすくてシンプルなハートフルストーリーに弱いんだなぁ。

調べてみると、この映画は舞台原作らしい。なるほど、通りで手法が古典的!演劇だいすき人間なので、今後どこかで上演されることがあったら観にいきたい。

 

そしてやられたのが最後のどんでん返し。霊安室のファンが回っているから近く誰か死ぬはず」というよくわからない噂 と ガマ王子と大貫の見事なシンクロ という 大貫の死亡フラグダブルミスリードにまんまと引っかかり、「劇中劇中劇」の最期、大貫が死んだかのように思わされる。しかし、実際に死んだのはパコだった。パコの余命はとっくに過ぎていたのだ。その余命を延長していたのは、大貫と過ごした楽しい時間…だったかもしれない。なんちゅー話だ。ふざけんな。めっちゃ泣いたわ。

 

結局、大貫がしたことって、パコのためでありながら、大貫自身のためでもあったんだな。パコのおかげで、他人のために何かする喜びや他人のために流す涙を知って、大貫は成長するんだな。

逆に言うと、もう定年してるおっさんなのに、大貫はそんなことも知らなかった。もともと経営者で、一人で会社を大きくしたという自負があり、定年をきっかけに会長職に追い込まれたことに憤怒している、という大貫の初期設定がここにきてグッとくる。会社を大きくするのに必死になっていたがために、他人に厳しく、そして自分にも厳しくしてきたのだろう。そして、そんなことにも気づかなかった。あるいは、気づいていたけれど、会社のためならどうでもいいと思っていた。それが、パコとの出会いで変わる。

序盤は大貫のことを「なんだこのクソジジイ」と思って観ていたが、パコのため、自分のために必死になる大貫の姿にどんどん心を打たれていく。それは視聴者だけではなく、大貫の周りの登場人物たちも同じで、嫌われ者の厄介ジジイだった大貫は「ちょっと見直したぜ」ってな感じの評価を受ける。いいよなあ。ほんとこういう話好きだわ。

 

あ、肝心の中西香菜さんが心に残ったシーンだけど…中西香菜さんにネタバレくらってたせいかあまりストンと落ちなかった!(他人のせいにするな) なんか、こう…さ、「来るぞ…」と思ってると感動しないよね。でもめーちゃくちゃ映画はおもしろかったからいい。まさか新幹線の中で泣かされるとは思わなんだ。

今は亡き公式サイトの魚拓を見ると、「子どもが大人に、読んであげたい物語。」というキャッチコピーがついているらしい。この映画は、知らず知らずのうちに傲慢になっているかもしれない「大人」の自分への戒めとして心に残しておきたい。いつでも、自分と他人に優しいひとであれるように。

 

 

昨日、アンジュルム神戸リリイベに行った。卒業発表後初めてのリリイベ。なんでかめちゃくちゃ緊張した。きっと、中西香菜さんも緊張していた。

この映画を直前に観ていたこともあってか、実際に中西香菜さんに会って「中西香菜さんの卒業という選択は、きっと彼女自身が彼女自身のためにした大きな決断なんだ」と思った。いやそんなの考えるまでもなく当たり前なんだけどさ、なんかかななんを見てて感じるところがあって。だから、卒業の理由とか卒業後のこととかを変に詮索するのはなんだかちがう気もした。中西香菜さんが卒業するまでの短い期間に精一杯応援したいし、卒業後の人生を応援する気持ちで送り出したい。中西香菜さん、大好き!